ヘッジファンドのリスクと危険性は?その対策と投資先の選定方法を解説!

GAZOU

ヘッジファンドへの投資を検討している方々、どのようなリスクがあるのか、他の投資にはないヘッジファンド特有のリスクは存在するのか、そして、ヘッジファンドのリスクや危険性への対策を知りたいと思っていることでしょう。

こちらの記事にお越しいただいたのも、そんな疑問や関心からではないでしょうか。

ヘッジファンドは様々な投資手法を組み合わせ、リスクをヘッジ(回避)しながら利益を追求する私募ファンドです。ただし、他の投資と同様にヘッジファンドも無リスクではなく、一定のリスクが存在します。

ヘッジファンドへの投資を検討する際には、そのリスクを正確に理解し、リターンとリスクを比較検討することが重要です。そして、十分な検討の結果、リスクを受け入れることができる場合に投資を進めるべきです。

この記事では、ヘッジファンドにおける共通のリスクや危険性、そしてその対策について詳しく解説していきます。ヘッジファンドへの投資を検討する際の貴重な情報となるでしょう。

一般的な金融商品としてのヘッジファンドのリスク

まずはヘッジファンドに限らず、投資をする際に一般的に潜在するリスクについて確認してみましょう。

投資に慣れている方にとっては当然のことかもしれませんが、一般の方々にもわかりやすく説明します。

元本割れのリスク

ヘッジファンドには元本割れのリスクが存在します。

これはヘッジファンドに限らず、投資一般において元本保証がないため、損失が発生すれば元本が減少する可能性があることを指します。

元本が真に保証されるのは銀行預金だけであり、その場合でも銀行が破綻した場合、1,000万円を超えた部分は保証されません。さらに、日本国債でさえも、日本国が破綻した場合には元本割れのリスクが存在します(もちろん、その可能性は非常に低いですが)。

過去には銀行預金の利回りが数パーセントもあって元本保証が確かであったため、リスクを冒す必要性はありませんでした。しかし、現在では銀行預金の利回りの改善は期待できないと言われています。

資産を増やすためには、元本割れのリスクを受け入れる覚悟が必要です。

運用失敗のリスク


ヘッジファンドには運用失敗のリスクが存在します。元本割れのリスクとは異なり、ヘッジファンドは投資戦略の失敗によって損失を被る可能性があります。

しかし、興味深いことに、ある調査によれば1993年から2010年までの間、ヘッジファンドのボラティリティはS&P500(つみたてNISAでよく推奨される人気のある指数)よりも3分の1ほど低いという結果が出ています。これは、多くのヘッジファンドがレバレッジ、借金、信用取引、デリバティブなどを活用し、リスクを巧みにコントロールしながらリターンを最大化しようとしているためです。

そのため、市場が下落してS&P500が急落するような状況でも、優れたヘッジファンドは利益を上げることができることがあります。

ただし、ヘッジファンドには伝統的な資産(株式や債券)よりも大きなテール・リスクを抱えているとされています。テール・リスクとは、発生確率が極めて低いが、発生した場合の資産損失が著しく大きいリスクのことを指します。

ヘッジファンドは個別の取引や戦略を公開しないため、テール・リスクを事前に予測することは非常に難しいです。したがって、ヘッジファンドへの投資に際してはリスク管理が不可欠です。

カントリーリスク

これは日本以外のヘッジファンドに投資する場合に関連するカントリーリスクについての話です。カントリーリスクは、海外投資を行う際に、対象国の政治、経済、社会環境の変化により、個別ファンドが持つ投資リスクとは無関係に収益が損なわれる可能性があるリスクを指します。

カントリーリスクの要因としては、以下のようなものがあります:

  • 経済情勢の変化: 国がデフォルトする、過剰なインフレが発生するなど、経済に関する不測の事態。
  • 政治情勢の変化: 内乱、革命、政治的な混乱など、政治に関連した変動。
  • 政策や規制の変化: 海外投資に対する規制や送金規制の変更、政策の変更。
  • 自然災害: 地理的な位置、気象条件、環境的な要因による自然災害の発生。

カントリーリスクは多くの民間会社によって格付けられており、ヘッジファンドが所在国と投資対象国のカントリーリスクを適切に評価することが重要です。したがって、ヘッジファンドに投資を検討する際には、これらのリスクについて注意深く調査し、リスク管理を行うことが求められます。

税制などの変更リスク


ヘッジファンドには税制などの変更リスクが存在します。ヘッジファンドが投資対象としている資産に対する課税ルールが変更されると、その運用利益に対する課税額も変動する可能性があります。これにより、投資家の利回りが悪化する可能性があるのです。

また、個人投資家がヘッジファンドから受け取る運用利益への課税ルールが変更され、増税が行われれば、投資家が手元に受け取る資産が減少することにつながります。

さらに、ヘッジファンド自体が株式会社や合同会社などの企業形態を取っている場合、企業に対する税制が変更されることは、運用に悪影響を及ぼす可能性があることを考慮する必要があります。

ヘッジファンド特有のリスク

ここまで紹介してきたリスクは、ヘッジファンドに限らず投資全般に関連するものであり、おそらく多くの方にとっては馴染みのある内容だったかと思います。

それでは、ここからはヘッジファンド独自のリスクについて詳しく解説していきます。

ファンドマネージャーのリスク

ヘッジファンドにはファンドマネージャーのリスクが存在します。ヘッジファンドの運用成績は、そのファンドを率いるファンドマネージャーのスキルや判断に大きく左右されます。

ファンドマネージャーが優れたプロフェッショナルであっても、いくつかのリスク要因が存在します。

  1. スタイル・ドリフトのリスク: スタイル・ドリフトは、ファンドマネージャーが本来の投資戦略から逸れて異なる投資を行うリスクです。例えば、ファンドマネージャーがテクノロジー関連の株式に特化しているにもかかわらず、他の業種に広範に投資することで、ファンドのパフォーマンスが悪化する可能性があります。これは、ファンドマネージャーの判断ミスによるもので、注意が必要です。
  2. キャパシティ・リスク: ヘッジファンドが特定の戦略に対して過度な資金を集めすぎると、その戦略が効果を発揮しづらくなり、パフォーマンスが低下することがあります。このリスクを回避するために、一部のヘッジファンドは一定の資金額を集めたら新規募集を停止することがあります。
  3. ファンドマネージャー変更のリスク: 大規模なヘッジファンドでは、ファンドマネージャーが変更されることがあります。新しいファンドマネージャーの運用スタイルや判断が以前のものと異なる場合、ファンドのパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。これは、投資家にとって予測が難しいリスクです。
  4. ファンドマネージャーの離脱リスク: 小規模なヘッジファンドでは、ファンドマネージャーが辞任する可能性があるため、運用が続けられなくなるリスクも考えられます。この場合、ファンドは償還になり、投資家に資金が戻ってきますが、新たなファンドを見つける必要が生じます。

これらのファンドマネージャーに関連するリスクは、ヘッジファンドを検討する際に注意が必要であり、ファンドマネージャーのスキルと経験を評価することが大切です。

また、ファンドマネージャーが適切なリスク管理手法を用いているかどうかも確認することが賢明です。

流動性のリスク

ヘッジファンドには流動性のリスクが存在します。

これは、ヘッジファンドが投資家に解約に制限を課すことが多く、解約タイミングが限られていることから生じます。通常、ヘッジファンドでは月に1回や四半期に1回など、限られた解約タイミングが設定されています。

さらに、解約申請を行う際にはかなり前もって申請する必要があり、実際に資金が手元に戻ってくるまでに時間がかかることがあります。

このような流動性制約は、投資家にとって不便に感じられるかもしれませんが、それには理由があります。

ヘッジファンドは、ショートポジションやレバレッジを活用した複雑な運用戦略を採用しています。そのため、予期せぬ大量の解約が発生すると、ファンドの運用戦略に支障をきたし、運用成績が損なわれる可能性があるのです。

例えば、市場が下落局面でファンドが利益を上げるポジションを保持している場合を考えてみましょう。

しかし、この時に投資家たちからの急激な解約が相次ぐと、ファンドの運用資産が減少し、そのポジションを維持するのが難しくなります。結果として、運用益が損なわれる可能性が高まります。

このような事態を防ぐために、ヘッジファンドは流動性制約を設け、急激な資金流出を抑制し、既存の投資家の利益を守る役割を果たしています。投資家がヘッジファンドに参加する際には、この流動性制約に注意を払う必要があります。

ファンド破綻のリスク

ヘッジファンドには破綻のリスクが存在します。これは、一般的な投資信託の運用会社とは異なる点です。一部のヘッジファンドは、大きなテール・リスク(極端なリスク)を抱えていることがあるため、注意が必要です。テール・リスクとは、発生確率が非常に低いが発生した場合の損失が著しく大きいリスクを指します。

以下に、いくつかの有名なヘッジファンドの破綻事例を紹介します。これらの事例は、ヘッジファンドには破綻リスクがあることを示すものです。

ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)

LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)は、1993年にメリウェザー氏によって設立された、その名を知らしめた著名なファンドです。このファンドは、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・マートンや、元FRB(アメリカ連邦準備制度)議長のデビッド・マリンズなど、一流の経済学者や専門家たちを招き入れ、そのメンバーはしばしば「ドリームチーム」と称されました。

当初、LTCMは金融工学の原則に基づき、慎重な取引を行っていました。しかし、次第にファンドはレバレッジを引き上げ、理論上は損失が無限に膨れ上がる可能性のあるポジションを積み重ねるようになりました。このアプローチは、テール・リスク(極端なリスク)を考慮しない極めて高リスクなものでした。

LTCMは高い運用実績を収めていましたが、その後、アジア通貨危機やロシア財政危機など、続けざまに金融危機が発生し、このファンドは破綻しました。この事例からは、リスクを過度に無視するアプローチが、いかに危険であるかが明確に示されています。

タイガー・マネジメント

タイガー・マネジメントは、ジュリアン・ロバートソン氏が1980年に創設したファンドで、その成立時の資産額は800万米ドルに過ぎませんでした。

しかし、わずか数年でその規模は急拡大し、1997年には10.5億米ドルに達し、世界で2番目に大きいヘッジファンドとして名を馳せました。

ところが、ロシア財政危機や日本円の急騰など、複数の金融危機に見舞われ、タイガー・マネジメントは多額の損失を抱え、最終的に破綻しました。興味深いことに、このファンドは投資家へのレポートでポジションを公開しており、これがトレーダーたちによる狙い撃ちの標的となった一因とされています。

さらに注目すべきは、タイガー・マネジメントの愛弟子であるフアン氏が、2021年3月に破綻し話題になったアルケゴス・キャピタル・マネジメントの創設者であることです。

彼もまた、タイガー・マネジメントのような高リスクなポジションを取っていたことが、その破綻の要因の一つと考えられています。

ヘッジファンドのリスクへの対策

ヘッジファンドのリスクについて説明しましたが、ほとんどのリスクは適切なヘッジファンドの選択によって回避できます。

まず、元本割れや破綻のリスクを軽減するために、過去の運用実績を注意深く調査しましょう。

将来の運用成績を予測するのは難しいことですが、過去の実績が堅実であれば、今後の運用においてもリスクは低くなります。ただし、一部のファンドはテール・リスクを無視して高リスクの運用を行っているため、金融危機をどのように乗り越えたかを詳細に調査することが重要です。

例えば、特定のファンドが日本株に投資している場合、日経平均株価の下落時にどのような実績を収めたかを確認することは賢明です。

次に、ロックアップ期間などの流動性のリスクに対処するために、ヘッジファンドへの投資には余剰資金を利用しましょう。生活費や急な支出に必要な資金を投資に充てないようにしましょう。必要なタイミングが予測できる場合は、解約の申し込みを余裕をもって行うことで問題を回避できます。

最後に、ヘッジファンドは情報を公開しないため、詐欺的なファンドも存在します。これを避けるためには、ファンドが許認可を受けているか、その運営陣についての信頼性を確認しましょう。信頼性のある社会的な信用力を持つファンドを選ぶことが、詐欺から身を守る一つの方法です。

ヘッジファンドのリスクまとめ

ヘッジファンドのリスクについてまとめましたが、いかがでしょうか?

ヘッジファンドには他の投資と同様に、元本割れや運用失敗、カントリーリスク、税制リスクなどの一般的なリスク要素が存在します。しかし、ヘッジファンド特有のリスクとして、ファンドマネージャーへの依存度が高いことや流動性の制約が主要な要因です。

これらのリスクを軽減するためには、ファンドの過去の運用実績を詳しく調査し、信頼性の高いファンドに投資することが重要です。ただし、ヘッジファンドのリスクは一般的なガイドラインであり、実際の投資においては個別のファンドごとに異なる可能性があるため、注意が必要です。

投資には常にリスクが伴いますが、そのリスクを自身の許容範囲内で管理できる場合、投資は資産を増やす方法の一つとして検討できます。ただし、慎重な調査とリスク管理が不可欠です。

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