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ヘッジファンドってどんな手法で運用しているのでしょうか?
ヘッジファンドの投資戦略について詳しく知りたいと思いますよね。
ヘッジファンドの投資戦略が異なれば、そのパフォーマンスにも大きな違いが現れます。
この記事では、ヘッジファンドとは何か、そしてどのような投資戦略を採用しているのか、詳しく解説していきます。
ヘッジファンドは、あらゆる投資手法を駆使して、どんな市場環境でも利益を追求することを主な目的とする絶対収益追求型のファンドです。
ヘッジファンドが具体的にどのような投資戦略や運用手法を用いて利益を上げているのか、それぞれの戦略を詳細に説明します。
ヘッジファンドの代表的な5つの投資戦略とその手法について、ご紹介していきますので、ぜひご覧ください。
ヘッジファンドの5つの代表的な投資戦略とその手法!
ヘッジファンドには数多くの投資戦略や運用手法が存在し、各ファンドは多種多様な手段を駆使して利益を追求しています。
そのため、ヘッジファンドの投資戦略は、厳密に言えばファンドごとに異なると言っても過言ではありません。
ヘッジファンドの分類方法は調査会社によって異なりますが、ここでは米国最大手のヘッジファンド調査会社であるヘッジファンド・リサーチ社(HFR社)の基準をご紹介します。
※HFR社は、その提供するデータやサービスが世界中の機関投資家などに広く利用され、実質的な業界標準となっています。
代表的な投資戦略
- 株式ヘッジ
- イベントドリブン
- マクロ
- レラティブバリュー
- マルチストラテジー
この5つに分類できない、独自のテーマで運用しているヘッジファンドも多数存在しますが、大まかに言えば上記の戦略に分類されます。
その1 株式ヘッジ
株式ヘッジは、その名の通り、株式市場に焦点を当てた戦略で、運用資産額は約1兆ドルにも上ります。
この株式ヘッジには、以下のような戦略が分類されます。
株式ロングショート戦略
株式ロングショート戦略は、伝統的なヘッジファンドの戦略の一つです。
この戦略では、相対的に割安な個別株式を買い(ロングポジション)、相対的に割高な個別株式を空売り(ショートポジション)します。
このアプローチにより、市場が上昇している時でも下落している時でも収益を狙うことができ、市場リスクを抑えつつ運用できる特長があります。
ただし、ロングとショートのバランスはファンドによって異なりますが、一般的には多くのファンドがロングに寄ったポートフォリオを構築しています。
株式マーケットニュートラル戦略
株式マーケットニュートラル戦略は、市場の要因を完全に相殺することを目指しています。
この戦略では、ロングとショートのポジションを組み合わせますが、株式ロングショート戦略と同様に、ほぼ同量のロングとショートを保有するポートフォリオを構築します。一部のファンドでは、業種や企業規模に関してもロングとショートで同様のポジションを取り、詳細なレベルでリスクヘッジを行います。
この戦略の主要な特徴は、市場変動リスクをほぼゼロに抑えることを目指していることです。その代わり、株式ロングショート戦略と比較してリターンは一般的に低くなります。
興味深いことに、機関投資家がヘッジファンドへの投資を増加させるきっかけの一つは、株式マーケットニュートラル戦略の人気にあります。
2000年以降、株式市場の低迷や低金利環境に伴い、市場の影響を受けずに安定した収益を追求できるこの戦略に多くの資金が集まるようになりました。
その2 イベントドリブン
イベントドリブン戦略は、企業の連結、買収、資本再編、倒産、清算などの会社再編に焦点を当てる投資戦略です。
この戦略の対象は、対象企業が発行する株式、債券、およびそれに関連するデリバティブなどです。この戦略の運用資産額は約1兆ドルに達しています。
イベントドリブン戦略は、一度のイベントによって利益が大幅に増加する可能性がありますが、その収益はしばしば突発的なイベントに依存しているため、収益の予測が難しいことがあります。
この戦略には、マージャーアービトラージ戦略、ディストレスト戦略、アクティビスト戦略などが含まれます。
マージャーアービトラージ戦略
マージャーアービトラージ戦略は、企業の買収や合併が見込まれる場合に、関連する企業の株式を活用して裁定取引を行います。
裁定取引とは、同じ性格を持つ2つの商品の価格差を利用する取引戦略で、割安な商品を買い、割高な商品を売ることを含みます。
マージャーアービトラージ戦略では、通常「買収企業と被買収企業」または「合併する各企業」の株式が同じ性格を持つ2つの商品として取り扱われます。
たとえば、買収を考えた場合、現金で買収が行われる場合、被買収企業の株式価格が買収価格よりも低い場合、被買収企業の株式を買うことになります。
逆に、買収が株式交換で行われる場合、交換比率と両社の株式の市場価格の比率を考慮して、対応するポジションを取ります。
どちらの場合も、買収が実行されることで、市場価格との差額を利益として得ることができます。
ディストレスト戦略
ディストレスト戦略は、経営破綻した企業や破綻の兆候のある企業の株式や債券などに投資する戦略です。
この戦略の対象となる企業は、通常、非常に悲観的な評価を受け、本来の価値に比べて大幅に低い価格で取引されている企業です。
ディストレスト戦略の目的は、経営再建による価格の回復や、残余財産の価値などを計算し、市場価格との価格差から利益を得ることです。
このタイプのヘッジファンドは、単に投資するだけでなく、投資した企業にアドバイスを提供したり、実際に経営に参加して企業再建を促進することもあります。
アクティビスト戦略
アクティビスト戦略は、株価が割安な上場企業に投資し、事業提案などを通じて株主価値を向上させ、投資リターンを追求する戦略です。
要するに、投資している企業に対して積極的なアクションを起こし、収益を高める戦略です。
この戦略は、株式投資による収益を追求するものであり、ディストレスト戦略のように投資先の経営に参画することはありません。
具体的には、投資家として、投資先の企業に対して資産の売却、子会社の売却、配当の増額、自社株買い、経営者の交代などを提案し、株主としての影響力を行使します。
過去には、アクティビストファンドの中には、一方的な株主提案や敵対的な買収を通じて、短期的な利益を追求するものが多く見られ、問題視されることもありました。
しかし、近年では、投資先企業の中長期的な価値向上を目指す友好的なアクティビストファンドへの関心が高まっています。
その3 マクロ
マクロ戦略は、広範な資産クラスに焦点を当て、トップダウンのアプローチを採用して収益を目指す投資戦略です。この戦略の運用資産額は約5,000億ドルに達しています。
株式ヘッジ戦略とは異なり、特定の個別銘柄の割高・割安を追求するのではなく、市場全体の方向性に賭けたポジションを取るのが特徴です。
そのため、市場が穏やかな時期ではリターンが限定的ですが、市場トレンドが大きく動く局面では非常に高いパフォーマンスを発揮することがあります。
マクロ戦略には、グローバルマクロ戦略やマネージドフューチャーズ戦略など、さまざまな派生戦略が存在します。
グローバルマクロ戦略
グローバルマクロ戦略は、マクロ経済の予測に基づいて、世界各国の通貨、株式、債券など、さまざまな市場の方向性に投資する戦略です。
この戦略は、マクロ経済の見通しを重視し、市場全体の動向にポジションを取ることを特徴としています。そのため、市場が大きく動く場面で高いパフォーマンスを発揮することがあります。
この戦略の代表的な例として、「ジョージ・ソロス」が英国ポンドを売り崩し、英国の中央銀行であるイングランド銀行に対抗したことが挙げられます。ソロスの成功事例は、グローバルマクロ戦略の有効性を示すものとして広く知られています。
グローバルマクロ戦略は、世界中のさまざまな資産を分析するために多くの人員が必要であり、新興ヘッジファンドの参入が難しいため、この戦略は主に大手ヘッジファンドによって採用されているとされています。
マネージドフューチャーズ戦略
マネージドフューチャーズ戦略は、株式、債券、金利、通貨に加えて、エネルギー、貴金属、農産物などの商品先物とオプションに投資する戦略です。
この戦略では、テクニカル指標や定量分析を駆使し、主に「アルゴリズム」として知られるコンピュータによるシステム売買を行います。
マネージドフューチャーズ戦略は、24時間365日トレードが可能であり、超高速売買も行われることがあります。これにより、微細な価格変動を収益に変えることも可能となります。
この戦略はしばしば「CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザーズ)」とも呼ばれており、商品市場への投資を専門的に行うアドバイザーを指します。
その4 レラティブバリュー
レラティブバリュー戦略は、2つ以上の市場や証券間の価格の歪みに焦点を当てて運用される戦略で、その運用資産額は約1兆ドルとも言われています。
この戦略では、債券市場などで微細な価格の歪みを捉え、それから収益を得ようとします。そのため、レバレッジ比率が比較的高めに設定されている場合があります。ただし、この高いレバレッジは潜在的なリスクを伴うため、注意が必要です。
通常の市況では安定的な収益が期待されますが、ボラティリティが急上昇するなどの市場の不穏な局面では損失が拡大する可能性があることに留意すべきです。
レラティブバリュー戦略には、債券アービトラージ戦略や転換社債アービトラージ戦略などが含まれます。
債券アービトラージ戦略
債券アービトラージ戦略は、国債、社債、モーゲージ担保証券などさまざまな種類の債券市場における価格の歪みを利用した投資戦略です。
この戦略では、市場で相対的に割安と見なされる債券を購入し(ロングポジション)、相対的に割高と見なされる債券を売却(ショートポジション)することを通じて収益を狙います。
債券アービトラージ戦略は、株式マーケットニュートラル戦略の債券版とも言えます。この戦略では、ロングとショートの債券ポジションをほぼ同量保有するポートフォリオを組むことが一般的です。
転換社債アービトラージ戦略
転換社債アービトラージ戦略は、割安な転換社債を購入し、同一発行体の株式を空売りする投資戦略です。
転換社債とは、事前に決められた条件で株式に転換できる権利が付いた社債のことです。
株価が上昇すると、転換社債を株式に転換し、その株式を売却することで利益を得ることができます。
一方、株価が下落する場合でも、空売りによって利益を得られるうえ、転換社債は満期になると額面で償還されるため、損失は発生しません。
この戦略により、株価が上昇しても下落しても収益を上げることが可能です。
ただし、株価のボラティリティが低下すると、転換社債が転換できず、株式の空売りからも利益が得られないという状況が発生し、戦略の優位性が失われる可能性がある点には注意が必要です。
その5 マルチストラテジー
マルチストラテジーは、複数のヘッジファンド戦略を一つのファンドの下で組み合わせた戦略です。
異なる戦略の運用を専門とするマネージャーがチームを組み、同じファンドの中で運用とリスク管理を共有します。
これにより、複数の戦略への投資を通じて、リスクを分散させつつ、市場状況に応じて戦略の配分を迅速かつ効率的に調整できます。要するに、この戦略はファンド内で複数の異なる戦略を調和させ、投資リターンの最大化を図るものです。
複数のヘッジファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ(FOF)の投資信託とは、投資戦略の分散において共通点があります。
ただし、マルチストラテジーはFOFと異なり、ファンドのファンドでの投資に伴う二重の報酬が発生しないため、コストメリットが高いと言えます。
ヘッジファンドの投資戦略(手法)別のパフォーマンス
株式ヘッジ | イベントドリブン | マクロ | レラティブバリュー | マルチ | |
---|---|---|---|---|---|
2008年 | -22.19% | -18.79% | -0.10% | -12.14% | -13.79% |
2009年 | +28.35% | +30.49% | +4.97% | +25.99% | +26.28% |
2010年 | +9.87% | +10.63% | +7.73% | +9.94% | +9.22% |
2011年 | -4.21% | -1.97% | -2.92% | +1.89% | -0.68% |
2012年 | +5.44% | +7.68% | +0.46% | +9.47% | +7.93% |
2013年 | +10.12% | +10.65% | -2.00% | +6.30% | +5.96% |
2014年 | +2.67% | +0.91% | +9.41% | +3.48% | +4.02% |
2015年 | -4.60% | -5.94% | -2.91% | -2.41% | -1.08% |
2016年 | +11.52% | +14.07% | -0.60% | +10.41% | +8.05% |
2017年 | +9.40% | +5.14% | +0.67% | +3.27% | +2.69% |
2018年 | -0.41% | +1.82% | -0.31% | +2.96% | +2.10% |
2019年 | -9.59% | -12.24% | +2.64% | -6.39% | -3.80% |
上記は、ヘッジファンドの投資戦略別のパフォーマンス推移を示した表です。この表をご覧いただくと、異なる投資戦略が異なるタイミングでどのようにパフォーマンスするかが明確になります。
株式ヘッジとイベントドリブンは、主にロングポジションを持つ戦略ですので、リーマンショックの2008年やコロナショックの2019年のような市場の大幅な下落期には大きな損失を被りました。
逆に、2009年や2016年のような株式市場が好調な期間では大きな利益を上げています。
マクロ戦略は、市場が下落しているときにパフォーマンスが強いため、他の戦略が苦戦した2008年や2019年でも堅調な結果を出しました。ただし、市場のトレンドが明確でない場面ではパフォーマンスが振るわないことがあります。
レラティブバリュー戦略は、通常時には市場の状況に左右されず安定したパフォーマンスを示しますが、不安定な期間、例えば2008年や2019年のような年には損失を被りました。
マルチストラテジーは、市場が下落している期間でも比較的損失を抑え、総じて安定的なパフォーマンスを維持しています。
ヘッジファンドの投資戦略ごとの特徴はあくまでも目安
ここまで、ヘッジファンドの各投資戦略の特徴やパフォーマンスについて解説してきましたが、これらはあくまでも目安であることを理解しておくことが重要です。
確かに、ヘッジファンドは投資戦略によって得意とする局面が異なるため、パフォーマンスにも差異が現れます。
しかし、市場を上手に読み取り、状況に応じてファンドを選ぶことは一般の個人投資家には難しいことです。
市場を読むことが難しい理由は、市場は予測不能な要素や出来事によって常に変動するためです。したがって、株式ヘッジを選ぶべきか、マクロ戦略を選ぶべきかをタイミングや状況に合わせて判断することは難しく、プロのファンドマネージャーですら困難なことです。
さらに、ヘッジファンドは投資戦略が同じであっても、ファンドごとに想定するリスクとリターンが異なります。実際のパフォーマンスはファンドマネージャーのスキルや戦略の実行力に依存します。
したがって、投資戦略の特徴はあくまで目安であり、ヘッジファンドのパフォーマンスに大きな差が出ることを考慮すべきです。
実際に、株式ヘッジ戦略を採用しながら市場が好調な時にマイナスを出すファンドや、マクロ戦略を採用しながら市場が下落していない時でも利益を上げるファンドなどが存在します。
ヘッジファンドへの投資を検討する場合、ファンドの戦略と過去の運用実績を詳細に調査し、リスクとリターンをよく理解することが重要です。
ヘッジファンドの投資戦略と手法のまとめ
ヘッジファンドの投資戦略とその手法についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか?
多くのヘッジファンドは具体的な取引の内容を非公開としており、そのため彼らの投資戦略は謎に包まれています。このため、便宜的にヘッジファンド・リサーチ社によって5つの代表的な投資戦略に分類されている基準を紹介しました。
投資戦略によってパフォーマンスに優劣がある傾向が見受けられますが、これらの特徴はあくまで目安に過ぎません。実際には、ヘッジファンドの投資戦略はファンドごとに異なり、そのパフォーマンスにも大きな差が存在します。
ヘッジファンドへの投資を検討する際には、投資戦略だけでなく、ファンドの過去の運用実績を十分に確認することが重要です。
投資判断をする際には、これらの要素を総合的に考慮して、リスクを最小限に抑えた賢明な投資を心がけましょう。
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